ワイヤーツイスターとは
ボルトやナットの緩みを物理的に防止するために使用される、ワイヤリング(安全ワイヤー掛け)専用の特殊工具です。
主に航空機やレース車両、特にモータースポーツの現場では、走行中の激しい振動や熱によってボルトが緩み、それが重大な事故につながるのを防ぐために、安全ワイヤリングが義務付けられている部品が多く存在します。
ワイヤリングは、ワイヤーツイスターと専用のステンレスワイヤーを使用し、ボルトの頭に設けられた穴と、車体側の固定箇所をワイヤーで連結することで行われます。
このワイヤリングの仕組みの要は、ワイヤーの張り方にあります。
ワイヤーは、ボルトが緩む方向に回転しようとする力に対して、逆にワイヤーが締まる方向へ力が働くように掛けられます。
つまり、ボルトが緩もうとすると、ワイヤーが引っ張られてボルトを締める方向に作用するため、物理的に回転を抑制するストッパーとして機能します。
ワイヤーツイスターは、このワイヤーを均一で美しい状態に「ねじる(ツイストする)」作業を、素早く確実に行うための専用工具です。
手作業では難しい均一なテンションとねじれを生み出すことで、ワイヤリングの強度と信頼性を高める役割を担っています。
安全を確保するためのワイヤリングの基本手順
ワイヤリングを行う際は、ただワイヤーを巻くだけでなく、「緩み止め」という目的を確実に達成するための基本手順があります。
1. ワイヤーを通す
ワイヤーをボルトの頭にある穴に通し、ワイヤーの先端がボルトの頭から少し出る程度に調整します。
2. 適切な方向へ張る
最も重要なのはワイヤーを張る方向です。
ワイヤーがボルトの「締まる方向」に引っ張られるように、ボルトから固定箇所(または別のボルト)へワイヤーを配置します。
例えば、ボルトが時計回りに締まる場合、ワイヤーは反時計回りに張るようにします。
3. ツイスターでねじる
ワイヤーツイスターの先端でワイヤーをしっかりと挟み込み、ロックします。
ワイヤーツイスターのハンドルを引く(または押す)ことで、ワイヤーが均一にねじれていきます。
ねじるのは、ボルトの頭と固定箇所の間にあるワイヤー部分です。
4. 締め付けと処理
必要なねじれの長さになったら、ツイスターを外し、残りのワイヤーをしっかりと固定箇所に通し、ペンチなどで締めて余分な部分をカットします。
カットしたワイヤーの先端は、怪我や他の部品との干渉を防ぐために、必ず内側に曲げて処理します。
ワイヤーツイスターの選び方と使用時の注意点
ワイヤーツイスターには、主に「オートリターン式(自動式)」と「手動式」があり、プロの整備士の多くは効率の良いオートリターン式を使用します。
選び方のポイントは、使用するワイヤーの太さに対応した工具であるか、そして一連の作業が片手で完結できる操作性の良さです。
ワイヤー径の確認
使用するワイヤー径(通常0.6mm~0.8mm)に対応しているかを確認します。
左巻き・右巻き
多くのツイスターは左右両方のねじりに対応していますが、工具によっては片方向にしか対応していないものもあるため注意が必要です。
ワイヤーの材質
ワイヤリングには、振動による破断を防ぐため、柔軟性のあるステンレス製のワイヤー(一般的にSUS304など)を使用します。
ワイヤリングは、ただ見た目を整えるだけでなく、安全を担保する重要な作業です。
ワイヤーが緩む方向に張られていない、あるいはねじりが甘いと、緩み止めの効果が得られません。
ワイヤーの先端処理を怠ると、ライダーや整備士の手を傷つける原因にもなりますので、確実な手順と丁寧な処理を心がけましょう。





